「鍼を刺すとなぜ痛みが楽になるのですか?」
鍼灸を受けたことがない方から、よくいただく質問です。東洋医学の言葉で説明されることも多い鍼灸ですが、現在は神経、筋肉、結合組織、脳の働きなど、さまざまな角度から研究されています。
先に結論をお伝えすると、鍼灸の仕組みは一つだけではありません。また、すべての症状に同じような効果が出るわけでもありません。
この記事では、鍼灸で身体に何が起きると考えられているのか、どのような痛みで研究が行われているのか、そして受ける前に知っておきたい注意点を紹介します。
鍼灸で身体に起きると考えられていること
1. 皮膚や筋肉への刺激が神経に伝わる
細い鍼で皮膚や筋肉を刺激すると、その情報が末梢神経から脊髄、脳へ伝わります。その過程で、痛みの感じ方を調整する仕組みが働く可能性があります。
これは「鍼が悪いものを外へ出す」というより、身体がもともと持っている感覚調整の仕組みに刺激を加える、という考え方に近いものです。
2. 筋肉周辺の状態が変化する可能性
筋肉の緊張が強い場所や、押すと普段の痛みが再現される場所へ鍼を行うことがあります。刺激によって局所の筋緊張や血流、痛みに関係する物質などが変化する可能性が研究されています。
ただし、「血流が良くなればすべて治る」という単純な話ではありません。痛みには関節、神経、睡眠、ストレス、活動量など多くの要因が関係します。
3. 脳が痛みを受け取る過程に影響する可能性
痛みは、傷んでいる組織だけで決まるものではありません。脳が身体からの情報をどのように受け取り、危険と判断するかによっても変化します。
鍼刺激が神経系の働きや痛みの処理に影響する可能性が報告されています。一方で、施術への安心感、期待、施術者との関係など、鍼そのもの以外の要素も結果に関係します。
どのような症状で研究されている?
研究が比較的多いのは、慢性腰痛、首の痛み、変形性膝関節症に伴う膝痛、片頭痛・緊張型頭痛などです。
米国国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、鍼治療が一部の腰痛・首痛、膝の変形性関節症に伴う痛み、術後痛などに役立つ可能性を紹介しています。また、片頭痛や緊張型頭痛の頻度を減らす可能性を示す研究もあります。
ただし、無治療と比較した場合には差が出ても、偽鍼と比較すると差が小さくなる研究もあります。したがって、「鍼を刺した作用だけですべて説明できる」と断定することはできません。
実際の施術では何を見るのか
同じ「腰痛」でも、長く座ったときに痛む方、歩き始めに痛む方、前に曲げると痛む方では、確認する内容が異なります。
当院では、痛い場所だけでなく、次のような点を確認します。
- いつから、どのように痛むか
- どの動作や時間帯で困るか
- 関節の動きや筋力
- 姿勢や歩き方
- 睡眠、活動量、仕事内容
- 医療機関への受診が必要な兆候がないか
鍼灸と運動・動作の評価を組み合わせ、その方が生活の中で何をできるようになりたいかを一緒に考えます。
鍼は痛い?
使用する鍼は注射針より細いものが一般的です。ほとんど感じない場合もあれば、チクッとした刺激、重い感じ、響くような感覚が出る場合もあります。
刺激が苦手な方には、浅い鍼、少ない本数、刺さない鍼、お灸や温熱などを検討できます。強い刺激を我慢する必要はありません。
安全性と注意点
適切に行われる鍼灸は比較的安全とされていますが、内出血、出血、施術後のだるさなどが起こることがあります。まれですが、感染や臓器損傷などの重大な事故も報告されています。
日本では、使い捨ての鍼を使用し、衛生管理と解剖学的な知識に基づいて施術することが重要です。
抗凝固薬を使用している方、出血しやすい方、妊娠中の方、ペースメーカーを使用していて電気鍼を検討する方などは、施術前に必ずお知らせください。
鍼灸より医療機関を優先する症状
次のような場合は、鍼灸やセルフケアだけで様子を見ず、医療機関へご相談ください。
- 急に力が入らなくなった
- 強いしびれや麻痺がある
- 排尿・排便の異常を伴う腰痛
- 高熱、息苦しさ、胸の痛み
- 転倒や事故のあとから強く痛む
- 原因不明の体重減少や夜間の強い痛み
- 今までにない激しい頭痛
まとめ
鍼灸は、神経系、筋肉や結合組織、痛みの感じ方など、複数の仕組みを通して作用する可能性があります。慢性腰痛、膝痛、頭痛などでは研究が行われ、役立つ可能性が示されていますが、効果の大きさや確実性は症状によって異なります。
大切なのは、「鍼なら何でも治る」と考えることでも、「科学的ではない」と一括りにすることでもありません。現在分かっていることと分かっていないことを整理し、身体の状態や希望に合わせて選ぶことです。
自分に鍼灸が合うか相談したい方へ
株式会社あしすとでは、理学療法士・鍼灸師の視点から、身体の動きと生活上の困りごとを確認します。治療院での相談に加え、来院が難しい方の訪問についてもご相談いただけます。予約・相談方法は、サイト整備後にご案内します。
※この記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の診断や治療に代わるものではありません。


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